下界を離れ高野山へ巡礼の旅
空海が開創した極楽浄土のテーマパークへ気分爽快のアトラクションが日常を忘れさせてくれる。
南海難波駅から急行で約50分。橋本駅と極楽橋駅を結ぶ高野線を観光列車「天空」が走る。乗車には事前予約をしておいて指定席券を橋本駅で受け取る方法と、当日券を購入する方法があるが、車両は2両編成で定員は75名なので予約をおすすめしたい。車内は様々な工夫がされており、風景を一望できるように、大型窓や窓向きの座席などが設けられている。座席は選ぶことができず南海電鉄が指定を行うため、前列の席に当たればラッキーだ。
▼ゆったり広めの天空の車内
橋本駅を出発すると、紀ノ川を渡る。大きな窓のおかげで、迫力のある景色を楽しむことができる。「天空」は途中、学文路駅と九度山駅に停車する。九度山駅構内には、九度山で生活した真田幸村の装飾がされている。
九度山駅の次の高野下駅からは、険しい山奥へ進むため、勾配やカーブが一気に激しくなる。そのため、車輪とレールの擦れ合う音が強く響き出す。そして、緑も多くなり、高野山に向かって登っていることを実感できる。
また、この区間を走る他の列車との大きな違いは、車内の展望デッキだ。そのため「天空」では、外の空気や自然を、匂いや音を楽しめる。「天空」に乗車したなら、ぜひ体感してほしい。
電車は、不動谷川に沿って走る。この、急勾配や急カーブが続く区間はゆっくりと走るため、途中のいくつかの橋梁では、渓谷の美しい景色をじっくりと眺めることができる。
▼天空からの眺め 眼下に渓谷
このように、見所がたくさんある「天空」に乗っていると、終点の極楽橋駅までの約40分間はあっという間だ。直通電車に特急「こうや」があるが、「天空」と並んで停車したならば鉄道ファンにはたまらない瞬間で夢中でシャッターをきるだろう。
極楽橋駅からは、ケーブルカー(鋼索線)に乗り換えてさらに山を登る。極楽駅構内の天井には、天井画が大きく描かれて美しい。
現在のケーブルカーは、2019年3月から運行している新型車両だ。鋼索線の最大勾配は、日本のケーブルカーの中で3番目に大きく、前面の車窓からは見える景色はまさに崖をよじ登るようだ。
世界遺産「宗教都市」へ いざ
終点の高野山駅に到着すると、連絡するバスに乗り換える。高野山駅の駅舎は、登録有形文化財に指定されており、歴史ある感じが伝わってくる。
奥之院口バス停で下車し、御廟へつながる参道を歩く。松や杉の大木が立ち並んでいるため、夏でも暑さはあまり感じないだろう。途中には歴史の教科書に出る武士や有名な会社の墓所もあり、あきさせない。
参拝を終えたらお楽しみの昼食だ。やはり精進料理を選びたい。精進料理とは、肉や魚を使わない料理で、そのため質素で薄味だと思われるが、実際は味付けは醤油や味噌などで意外と濃く、食器も鮮やかでその豪華さに驚かされる。
胡麻豆腐も、普段食しているものより濃厚で、ここでしか味わえないものだ。お土産にもぜひ買って帰りたい。甘味では生麩(なまふ)を使ったまんじゅう「笹巻あんぷ」もおすすめだ。
高野山には見所がたくさんあり、まさにテーマパークというにふさわしい。特に壇上伽藍の根本大塔は、想像を超える大きな塔で、大昔に建てられたと思うと驚かされる。
観光列車「天空」に乗り、非日常の世界に引き込まれていけば、高野山での体験を格別なものにしてくれる。高野山をエキサイティングなものにしているのはこの道のりにあるのかもしれない。